2013年6月4日火曜日

年金小説  『お誕生日まで待って』   プロローグ

『お誕生日まで待って』

(プロロ-グ)
妻の節子は、週間前に亡くなった。
節子は、決して美人とは言えないが、誰に対しても笑顔で接し、聞き上手なところがあり、そのうえかゆいところにも気がつくという申し分のない妻であり母親であった。

肢体不自由で歩行困難な私と三人の子供を抱えた妻は、家計を支えるため生命保険会社の外務員として一生懸命にがんばってきた。

夫の目黒和郎にとっても子供達にとってもかけがえのない彼女を亡くしてしまったのだ。

その節子から、亡くなる三週間前に緩和ケアー病棟内で大きな封筒を和郎に手渡された。
それは私の誕生会を家族全員で開いた翌日のことであった。

その封筒の表には、
<ありがとう和郎さまへ節子より>
と記載され、
<この封筒は、私が亡くなってから初七日の日に開けてください>
と大きく赤字で表示されていた。

 この封筒を開封する前に、今まで二人が歩んできた人生について触れて見ることとしよう。




(続く)

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